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ハイウェイを降りた辺りで、叩きつけるような荒天がフロントガラスを打ち付けた。男は改造したトラックの荷台に目をやると、左にハンドルを切った。あまりの土砂降りに帰路につくのを諦め、馴染みの陶山商店に逃げ込むことにした。
ずぶ濡れになって店内に入ると、旧友のチンドン屋講師であるジークマンが、見知らぬ男たちと何やら語り合っていた。目配せをして輪に加わると、笛吹のカワイとインテリア仏壇の訪問販売員であるカズミを紹介してくれた。
彼らは不労所得請負人なる資格の取り方について議論しているようで、ずぶ濡れもお構いなしに白熱し、火照る身体は湯気を帯びていた。そのうちシャツも乾くだろう。その熱気にやられ、普段は口にすることのない夢を、つい口走ってしまった。
男は朝昼晩(社)を名乗り、もぎたてを謳い文句にトラックの荷台に改造を施し、栽培スペースにして、移動販売で生計を立てていた。安定とは程遠い生活であるが、しかし、自分には夢がある、真っ白な空間に大量の土を盛って、自分の作ったものを見せつけてやりたい。そんな夢があるのだと。
まくし立てた後で、あっと我に返り、紅潮して下を向くと、誰かが口火を切った。
だったらやろうじゃないか。想いを芸えて(うえて)撒くのだ。
顔を上げると雨音が酷く響きだした。皆が頷いている。大きな神輿に担ぎ上げられたような、自分が岐路に立っている感覚がした。


text by takaaki akaishi
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